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    旅行
    12 /17 2018
    秦育三さん
    平成29年10月8日死去された秦育三さんのすずらん会出席最後の写真(平成17年)です。
    秦育三さんの生前の知られざる顔について会員の皆藤 建さんが[詩人 青田三吉のこと]と言う追悼文を送って下さいましたので原文のまま紹介します。


    詩人青田三吉のこと

    皆藤 健 

    すずらん会の大先輩の一人・秦育三さんが、青田三吉という筆名で詩を発表していたことを知っている人はあまり多くないかもしれない。詩人として名を知られるのは今も昔もほんの一握りの人で、ほとんどの人は無名のままで終わる。どんな芸術分野でもそうだが、知名度と評価は必ずしも一致しない。時代によっても変わる。蕪村ですら、子規に再発見されるまで長い間埋もれていたし、宮沢賢治も生前は無名に近かった。
    現在の読み手との幸運な出会いに恵まれてなくとも、挫折することなく、言葉の永遠性を信じて自己剔抉し、生涯詩を書きつづける一群の詩人たちがいる。そんな一人が秦さんの青田三吉だと私は思っていた。
    私は秦さんとHBC時代の仕事上の接点はゼロである。従って営業マンとしての秦さんのことは全く知らない。家庭人としての秦さんのことなども知らない。だから秦さんの全体像など語ることはできない。私の小さな窓から見た秦さんは詩心のある教養人という印象に尽きる。
    1960年代、全世界に反権力反権威運動の激震が走った。その余波でHBCでも労使が対立し、何次かにわたるストライキが決行された年があった。その時、人望のあった秦さんは周囲から無理無理に担がれて労組委員長にされていた。私も順番だからと説得されて渋しぶ中執の一人になっていた。結果は時代の雰囲気とはいえあまりにも無謀な戦術などが禍し、60年以前入社の人たちはご存知のように、組合側の惨敗に終わった。その過程での最高責任者としての秦さんの苦悩を間近に見て、脳天気だった私も感ずるところが多かった。傍観者的にいえば、秦さんは自分の教養からくる理念には忠実だが、修羅場での現実処理には全く無能だった。その無能さと、その後の不器用な身の処し方に私はひとりの詩人を見た。
    以来なんとなく気が合って淡い交際がつづいた。秦さんは詩人などと自分で称することなどなかったが、時どき恥ずかしそうに詩誌に載った作品を見せてくれるようになり、よれよれの文学中年文学老年の私を刺激しつづけてくれた。
    いま私の手元に1990年に近代文芸社から日本詩人文庫25集として発行された青田三吉「詩集・樹その他」がある。その時点までに“詩の村”“弦”“渦”“野性”などの詩誌に発表されたものの集大成だ。それ以後も秦さんの青田は色いろの詩誌に作品を発表されていて、その都度私は頂戴していたはずだが、残念ながら散逸させてしまった。
    前記詩集には長短38詩が収められているが、全部は紹介できないので、僭越ながら私が比較的に短めの3篇を選んでみた。どうか、ユニークなHBC人の一人だった詩人の一端に触れて見て頂きたい。詩集は発表の新しいものから古い方へと編まれているので、ここでの配列もそれに従った。

    樹の傍らで

    ことばを失う。
    問いは釘づけになる。
    しかし時が止まったとは
    確信できない。
    つぎ目も割れ目もない。
    とすればすべては流れて
    いるのだ。
    それなのに・・・・・・。
    ここに
    めまいするほどの大木が
    そそり立っている。
    地の芯から汲みあげる水音が
    静かさをきわだてる。
    空の深さ。
    根の重さ。
    人は近づくことができない。
    よろこびも憎しみも
    捨てる。
    そうするよりしょうがないから
    輪をえがく。
    それは人の歩いた
    足あとと言うことになる。
    ぼくは
    胃袋と性器をかついで
    ここを離れる。
    まっすぐではない道の涯に
    けしつぶほどの自分がいる。

    無機

    大木のクロヤマナラシが
    一列どこまでもつづき
    それが終わると
    砂漠だ。
    が ひとつ動かない。
    砂は
    海のようにうねりはじめる。
    二頭の馬が駆けぬける。
    だんだん小さくなる。
    豆つぶのように小さくなり
    それでも一生けんめい駆ける。
    底ぶかい空の下で
    彼等は 立ち枯れるだろう。

    ネオ・エゴチズム―1
    すべてが 消えてしまえば いゝに。
    喜びも 悲しみも 餓えも
    つぶらな幸せも。
    あのように狂った 嵐のあと
    骨まではだけた
    よれよれの 巨木。
    最後の響きと共に
    お前も 根こそぎ
    消えてしまえ。
    ミイラも
    火山も
    はれぼったい夜も。
    海岸は 平だ。
    蝶よ
    すい すいと舞え。








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